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文面は何のことはない、急ぎの用ではなく、近況報告などで埋まっていた。彼女らしいかわいいノリの文章が並んでおり、私は思わず微笑した。
最後まで読んでしまいたかったが、状況が許さなかった。信号が青に変わり、前方車両が進み始める。私はやむを得ず携帯から手を離し、運転に集中すべくハンドルを握った。
が、そのときだった。何の運命のいたずらであろう、画面から目をそらす直前に、一瞬映った一文が私の身を凍らせた。いや、熱く燃え立たせたのかもしれない。
>○○○、ノーパンでは出来るようになったんですが、何故かタンクトップでは出来ないまま…。
「ぁあ?!」
危なかった。非常に危なかった。驚きのあまり、私はアクセルを異常に強く踏み込み、暴走して車列に突っ込み、下手したらその場でお陀仏になるところであった。……というのはさすがに大袈裟だが、そのぐらいオーバーな表現をしたくなる、私の興奮を分かってくれたまえ。
その後はなかなか信号に引っかからなかった。私はやきもきした。走行速度は法令遵守、妄想は加速度満点、超高速。K嬢のかわいらしいタンクトップ姿と、見てはいけないの、の、ノーなおパンティ姿が脳内を駆け巡る! これは誘惑だろうか。からかわれているのだろうか。私はどうしたらいいのだろうか。
信号が赤になった。私が勇んで携帯を手にとったことは言うまでもない。
>ネット、ノーパソでは出来るようになったんですが、何故かデスクトップでは出来ないまま…。
「あー……」
のーとぱそこん、ね。ですくとっぷ、ね。
うん、分かってたけどね。落ち着ける状況で読まなかった私が悪いんだけどね。
嗚呼、祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。やがて信号が青に変わる。この世に不変のものは何もない。先頭だった私はゆっくりとアクセルを踏み込む。窓を開け、火照った頬を夜風にさらしながら、颯爽と夜の街道を走りゆくのであった――…